YOUTUBE SCRIPT SAMPLE — ミステリー/キャラ掛け合い

入ったら出られない森
〜日本一有名な禁足地は、たった18メートル四方だった〜

自主制作サンプルです。クライアント案件ではありません。実在の禁足地を扱うため、伝承は「そう記されている」という形で出典つきに構成しています。本ページはフル尺の全文を掲載しています。
ジャンルミステリー・都市伝説(ずんだもん×四国めたんの掛け合い)
想定尺約12〜15分(フル尺・全文掲載)
文字数セリフ実測 約5,500字
書式話者セリフ/場面テロップ(詳細のテロップ・図解指示は収録用シート側)

この台本で見ていただきたいところ

めたんねえ、ずんだもん。日本に「一度入ったら、二度と出てこられない森」があるって言ったら、信じるかしら?
ずんだもん出てこられない森……。それって、どこかの山奥にある、ものすごく深い樹海のことなのだ? 方角がわからなくなって、遭難しちゃうやつなのだ。
めたんううん。市役所の、真ん前。
ずんだもん……なのだ?
めたん千葉県市川市。国道14号線、千葉街道沿い。市川市役所の向かい側。最寄りの本八幡駅から歩いて5分ってところね。コンビニもマンションも建ち並ぶ、ごく普通の街のど真ん中よ。
ずんだもんちょっと待つのだ。それ、森じゃなくてただの街なのだ。
めたんその街の一角に、四方を柵で囲まれた竹藪がある。名前を「八幡の藪知らず」。市川市が立てた説明板には「不知八幡森」と書かれているわ。江戸時代から、この藪にはこう言い伝えられてきたの。──ここに入れば、再び出ることはできない。祟りがある、と。
ずんだもんうう、いきなり怖いのだ。でも、街の真ん中なんでしょ? 迷いようがないと思うのだ。
めたんええ。そこがこの話の、一番おかしいところなのよ。

テロップ:「八幡の藪知らず」

テロップ:「この動画で分かること」

めたん今日話すのは3つ。1つ目、この森の異常な「大きさ」。2つ目、入ってはいけない理由が6つもある、という異常事態。3つ目、その全部が後から貼られたラベルだったという話。
ずんだもん3つ目だけ、ちょっと意味がわからないのだ。
めたん最後まで聞けばわかるわ。……たぶん、あなたが一番ゾッとするのは3つ目よ。

テロップ:「18メートルの「森」」

めたんまず、現場の話からしましょうか。ずんだもん、この藪の広さ、どのくらいだと思う?
ずんだもんうーん、「出てこられない」って言うくらいだから……。東京ドーム何個ぶんとか、そういうやつなのだ?
めたん奥行きも、幅も、およそ18メートル。
ずんだもん……18メートル。
めたんええ、18メートル。
ずんだもんボクの知ってる「森」と、単位が2つくらい違うのだ。それ、コンビニ2軒ぶんくらいなのだ。
めたん正確に言うと、江戸時代の文献では「方十間」と書かれているの。『本朝俗諺志』や『遊歴雑記』ね。一間がだいたい1.8メートルだから、十間で18メートル。江戸の頃から今日まで、この藪の大きさはほとんど変わっていないってことよ。
ずんだもん待つのだ。18メートル四方って、真ん中に立ったら四方の出口が全部見えるのだ。目をつぶって歩いたって、10秒で外に出られるのだ。
めたんそう。だからこそ、この伝説はおかしい。深い山でも、広大な樹海でもない。走れば数秒で横断できる小さな竹藪が、日本でもっとも有名な禁足地として、何百年も語り継がれてきた。
ずんだもん……なんで、そんなことになってるのだ?
めたんそれを今日、ひとつずつ剥がしていくのよ。
ずんだもん剥がすって言い方がもう怖いのだ。

テロップ:「幕末には、もう祀られていた」

めたん現在の藪は、周囲をぐるりと柵で囲まれていて、中に入ることはできないわ。人が立ち入れるのは、街道に面した「不知森神社」という小さな社殿の、そのごく一角だけ。
ずんだもん神社があるのだ?
めたんええ。境内には石碑が建っていて、安政4年──西暦1857年に、伊勢屋宇兵衛という人物が建立したと刻まれているわ。
ずんだもん1857年っていうと……。
めたん幕末ね。ペリーが来航した4年後。江戸幕府がぐらつき始めた頃には、もうこの藪は「触れてはいけない場所」として、わざわざ祀られる対象になっていた。
ずんだもんということは、伝説はもっと前からあったってことなのだ。
めたんいいところに気づいたじゃない。そう、この禁足の言い伝えは、少なくとも江戸時代には確実に存在していたことが、複数の文献から確認できるの。ここからが本題よ。──なぜ、この18メートルの藪に入ってはいけないのか?
ずんだもん理由がちゃんとあるのだ?
めたんそれがね、ずんだもん。あるのよ。
ずんだもんおお。
めたんありすぎるくらい、たくさん。
ずんだもん……なのだ?

テロップ:「理由が、6つある」

めたんこの藪に入ってはいけない理由。市川市の公式な資料と、江戸時代以降の文献をあたると、こんな説が並ぶわ。
ずんだもんごくり、なのだ。
めたんひとつ。日本武尊が陣を敷いた跡地だから、恐れ多くて入れない。
ずんだもんいきなり神話の時代なのだ。
めたんふたつ。葛飾八幡宮を最初に勧請した神聖な土地だから。文化7年、1810年の『葛飾誌略』には、ここが仮の遷宮地だったと書かれているわ。
ずんだもんなるほど、神様の元いた場所だから立入禁止。それは筋が通ってるのだ。
めたんみっつ。平将門にまつわる話。将門が朝廷軍と戦ったとき、将門軍の鬼門にあたったのが、この場所だったという説。
ずんだもん出たのだ、平将門。
めたんよっつ。将門を討った平貞盛が、八門遁甲という陣を敷いた際に、「死門」にあたる一角をここに残した。だからこの地に入れば必ず祟りがある。
ずんだもんしもん……?
めたん八門遁甲というのは古代中国由来の兵法・占術で、方角を八つの門に分ける考え方よ。そのうち「死門」は、もっとも凶とされる方角。
ずんだもん名前からして、絶対に近づきたくないのだ。
めたんいつつ。寛延2年──1749年の『葛飾記』にはこうあるわ。討たれた将門を慕って付いてきた家来6名が、この地で土人形となって現れた、と。
ずんだもんひ、人が泥の人形になっちゃったのだ?
めたんむっつ。時代は一気に飛んで、大正12年、1923年の『千葉県東葛飾郡誌』。ここには、藪の中から毒のガスが出ているという説、それから、底なし沼があるという説が載っているわ。
ずんだもん……めたん。ちょっといいのだ?
めたんなにかしら?
ずんだもん多いのだ。
めたん多いわね。
ずんだもん多すぎるのだ。日本武尊と、八幡さまと、平将門と、中国の兵法と、毒ガスと、底なし沼。全部ぜんぶ理由が違うのだ。ひとつの藪に、理由が6つもぶら下がってるのだ。
めたんずんだもん。あなた今、この謎の核心に足を踏み入れたわよ。
ずんだもんえっ。ボク、なにか言ったのだ?
めたん普通、ある場所が禁足地になるときは、理由は一つのはずでしょう。神様がいるから。事故があったから。持ち主がいるから。──でもここは違う。理由が、時代ごとに増えていってるの。
ずんだもん増えていってる……。
めたんそう。そして増え方には、はっきりした順番があるのよ。

テロップ:「水戸黄門は、113年後に現れた」

めたんじゃあ、この藪でいちばん有名な話をしましょうか。ずんだもん、水戸黄門は知ってる?
ずんだもん知ってるのだ。えらい人が全国を旅して、悪いやつを懲らしめるのだ。
めたん実在の人物としては水戸藩主の徳川光圀ね。伝説ではこうなっているわ。──光圀公が、ただ一人でこの藪知らずに足を踏み入れた。中で数々の妖怪変化に襲われ、最後に現れた者から「今回だけは見逃してやろう」と告げられ、命からがら藪を出た。
ずんだもんうわあ、それが一番それっぽいのだ。えらい人が実際に体験したなら、話の重みが違うのだ。
めたんええ。だからこの話は、藪知らずの伝説の中でも群を抜いて有名になった。……ずんだもん、ここで年号を見てほしいの。
ずんだもん年号なのだ?
めたん徳川光圀が亡くなったのは、1701年。
ずんだもんうん。
めたんこの光圀の逸話が、藪知らずと結びついた形で文献に現れる初出は、文化11年──1814年の『遊歴雑記』とされているわ。
ずんだもん1701年に死んで……1814年に話が出てくる。……113年後なのだ。
めたん113年後。しかも、さっき紹介した『葛飾記』は1749年。この時点で藪知らずの伝説そのものは、もう記録されているの。でもそこに光圀は出てこない。出てくるのは、泥人形になった将門の家来たちよ。
ずんだもん……ということは。藪の伝説が先にあって、あとから水戸黄門が乗っかったのだ?
めたんそういうこと。もともとの原型は『水戸黄門仁徳録』という実録小説にあったとされているわ。宝暦年間、1750年代から60年代あたりに広まっていた読み物ね。当時、光圀を主人公にした痛快な物語が大流行していた。そこへ、「入ったら出られない不気味な藪」という格好の舞台があった。
ずんだもんくっついちゃったのだ。
めたんくっついたのよ。人気キャラクターと、有名スポットのコラボレーション。江戸時代のコンテンツ産業ってわけ。
ずんだもん言い方が現代的すぎるのだ。……でも、待つのだ。
めたんどうしたの?
ずんだもんそれって、つまりこういうことなのだ。今ボクたちが「昔から伝わる怖い話」だと思ってるものは、昔からずっと同じ形だったわけじゃなくて──誰かが少しずつ足していった結果、なのだ?
めたん……ずんだもん。今日のあなた、冴えてるじゃない。
ずんだもんボク、褒められると逆に不安になるのだ。

テロップ:「中に入った人がいる」

めたんさて。ここで、ひとつ厄介な事実を紹介するわ。──実は、この藪の中に入った人がいるの。
ずんだもんえっ。入ったら出られないんじゃなかったのだ? その人、どうなったのだ?
めたん普通に出てきたわ。
ずんだもん普通に出てきたのだ。
めたん人類学者の鳥居龍蔵という人物が、この藪の内部を実際に観察して、記録を残しているの。彼はこう書いているわ。藪の竹は広く切り取られていて、中は明るい。少しも恐ろしい所ではない。内部を見回しても、ただ普通の地面に竹が生えているだけで、人の手が加えられたような跡は何もなかった、と。
ずんだもん……なにも、なかったのだ。
めたんなにもなかったの。妖怪も、底なし沼も、泥人形の家来たちも。ただ、明るい竹藪があっただけ。
ずんだもんボク、ちょっとがっかりしてるのだ。でも同時に、すごく気持ち悪いのだ。
めたんあら、どうして?
ずんだもんだって、なにもなかったのに、伝説だけが残ってるのだ。中身が空っぽの箱に、みんなが必死でラベルを貼り続けてるみたいなのだ。日本武尊、平将門、毒ガス、水戸黄門……。
めたん──ええ。そのとおりよ、ずんだもん。

テロップ:「最初のラベル」

めたんじゃあ、その空っぽの箱に、最初に貼られたラベルはなんだったのか? 市川市が公式に示している、いちばん現実的な答えを言うわね。
ずんだもんごくり、なのだ。
めたんこの土地はね。「よその村の土地」だったの。
ずんだもん……なのだ?
めたん史実をたどると、この一帯は行徳の入会地だった。入会地というのは、村が共同で使う権利を持っている土地のことよ。つまりここは、八幡の中にありながら、八幡のものではなかった。だから八幡の住民は、みだりに立ち入ることが許されなかったの。
ずんだもん……立ち入り禁止の理由が権利関係だったのだ?
めたんそう。そして、そこから「八幡(の者には)知らず」と呼ばれた。それが訛って、「藪知らず」になったのではないか──市川市はそう説明しているわ。
ずんだもん……。
めたん怖い?
ずんだもん怖くないのだ。むしろ拍子抜けなのだ。……でも、めたん。それだと、なんで妖怪の話になっちゃったのだ? 入っちゃダメな理由が「よその村の土地だから」なら、そう伝えればよかったのだ。
めたん伝わらなかったのよ。
ずんだもん伝わらなかった。
めたん時代が変わって、村の境界も、土地の権利も、入会地という仕組み自体も意味を失っていった。残ったのは「ここに入ってはいけない」という決まりだけ。理由が抜け落ちて、禁止だけが残ったの。
ずんだもん……そして、空いた場所に、みんなが理由を入れていったのだ。
めたん日本武尊を入れた人がいた。将門を入れた人がいた。八門遁甲を入れた人がいた。毒ガスを入れた人がいた。そして1814年、誰かが水戸黄門を入れた。理由がわからない禁止ほど、人間にとって落ち着かないものはないから。
ずんだもん……こわい話なのだ。
めたんあら、さっき怖くないって言ったじゃない。
ずんだもん怖さの種類が変わったのだ。妖怪より、こっちのほうがずっと怖いのだ。だってそれ、ボクたちが今信じてる「昔からそう決まってること」も、同じかもしれないってことなのだ。
めたん最後にひとつだけ。「藪知らず」という言葉はね、今では辞書に載っているの。『広辞苑』などに、出口のわからないこと、迷って抜け出せないことを指す慣用句として収められているわ。
ずんだもん場所の名前が言葉になったのだ。
めたん18メートル四方の竹藪が、何百年もかけて、日本語そのものになった。妖怪は一匹も見つからなかったのにね。
ずんだもん……なんだかすごいのだ。中身は空っぽなのに、いちばん長く生き残ったのだ。
めたんさて。ここまで聞いて「行ってみたい」と思った人もいるかもしれないけれど、ひとつ約束してちょうだい。あの藪は今も柵で囲まれていて、立ち入りは禁止されているわ。入れるのは、街道沿いの不知森神社の一角だけ。
ずんだもんぜったいに柵を越えちゃダメなのだ。出られなくなるからじゃなくて、単純に、入っちゃいけない場所だからなのだ。
めたんそういうこと。……ずんだもん、案外まともなこと言うのね。
ずんだもんボクはいつもまともなのだ!
めたんじゃあ最後に。ずんだもん、今日の話を一言でまとめてくれるかしら?
ずんだもん……えっ、急に振るのだ? えーと。……理由を忘れると、人はそこに、怖い話を置いてしまう。
めたん……ええ。上出来よ。
ずんだもんやったのだ!
めたんそれじゃあ、今日はここまで。次はどこの禁足地に行こうかしら?
ずんだもんボクはもう当分お腹いっぱいなのだ!

出典

注記

※本台本は、市川市公式Webサイトの解説および江戸期以降の文献記載をもとに構成しています。諸説はいずれも「そう伝えられている/そう記されている」レベルの伝承であり、事実として断定するものではありません。

※八幡の藪知らず(不知八幡森)は現在立入禁止です。撮影・見学の際は柵の外から行ってください。

※キャラクターの一人称・語尾は VOICEVOX 公式プロフィールに明記されたものではなく、広く定着した慣習表記に沿っています。VOICEVOX 使用時はクレジット表記が必要です。

本ページは書式・構成・調査の進め方をご覧いただくための自主制作サンプルです。収録用の詳細指示(情報テロップ・図解)はスプレッドシート側に分離しています。ご依頼の際は、ジャンル・尺・文字数・書式・出典の確認範囲のご指定に合わせて執筆します。