YOUTUBE SCRIPT SAMPLE — 2ch馴れ初め/一人称独白
夜勤明けにコインランドリーで120円貸した相手→
3年前に俺を担当した看護師だった結果
自主制作サンプルです。クライアント案件ではありません。全編フィクションで、実在の人物・団体・店舗・医療機関とは関係ありません。本ページはフル尺の全文を掲載しています。
この台本で見ていただきたいところ
- よく再生されている馴れ初め動画のテンポを実測し、1文を短く刻む独白のリズムで構成
- 「120円」を出会い・再会・プロポーズで三度使い回す小道具の設計
- 相手の職業を隠す伏線(荒れた手・白いスニーカー)を、再会の一撃で回収する構成
- 冒頭は状況への直入りで始め、三年前の回想は中盤まで伏せる情報の出し順
テロップ:「朝六時のコインランドリー」
ナレーションその朝も俺は、コインランドリーにいたんだ。
ナレーション朝の六時。夜勤明けの、火曜日の話だよ。
ナレーション俺は二十八歳。物流倉庫の夜勤で、夜九時から朝五時までコンベアの番をしてる。
ナレーションアパートに洗濯機はないから、夜勤明けは駅前のコインランドリーに寄るのが決まりだった。
ナレーション作業着を放り込んで、ぐるぐる回る洗濯物をただ眺める。それが俺の唯一の楽しみだったんだ。
テロップ:「洗剤の自販機の前で」
ナレーションその日は先客がいた。
ナレーション洗剤の自販機の前で、女の人が固まってたんだ。
ナレーション財布を覗き込んだまま動かない。
ナレーション小銭が足りないのは見ればわかった。
ナレーション俺は普段、知らない人に声をかけない。
ナレーションでもその人の顔があんまり疲れてたから。
ナレーション夜勤明けの俺と同じ顔をしてたから。
ナレーション気づいたら、百二十円を差し出してたんだ。
俺あの、これ。使ってください。
千夏え。いえ、悪いです。
俺百二十円ですよ。気にしないでください。
千夏……じゃあ、来週の火曜。ここで返します。必ず。
ナレーション必ず、のところだけ妙に力強かった。
ナレーション律儀な人だなと思って、少し笑ってしまったよ。
テロップ:「缶コーヒーの利子」
ナレーション次の火曜。
ナレーション正直、忘れてると思ってたんだ。
ナレーションでも彼女は本当に朝六時にいた。
ナレーション百二十円と、缶コーヒーを二本持って。
千夏お借りした分です。それと、これは利子です。
千夏甘いのとブラック、どっちがいいですか。
俺じゃあ、甘いほうで。
千夏正解です。夜勤明けは甘いのに限りますから。
ナレーション夜勤明け。
ナレーションその一言で、少しわかった気がしたんだ。
ナレーションこの人も夜を働いて帰ってきた人なんだって。
ナレーションそれだけで妙に、仲間みたいな気がしたんだよ。
ナレーション世の中が起きる前に、一日を終えてる人間同士。
ナレーション説明しなくても通じるものがあるんだ。
ナレーション缶コーヒーは悔しいけどうまかった。
ナレーション夜勤明けに飲んだ中で一番うまかったんだ。
テロップ:「火曜日の常連」
ナレーションそれから毎週、火曜の朝だけ会うようになった。
ナレーション約束したわけじゃない。
ナレーションただ洗濯のサイクルが同じだっただけなんだ。
ナレーション名前を聞いたのは、ひと月くらい経ってからだよ。
千夏千夏です。下の名前だけで、すみません。
俺いえ。じゃあ俺も下だけで、健太です。
千夏健太さんですね。じゃあまた来週、たぶんここで。
ナレーションその店にはもう一人常連がいてね。
ナレーション毎週タオルを山ほど洗いに来るおばちゃんだ。
おばちゃんあんたたち、いつも一緒だね。夫婦かい。
俺違いますよ。ただの洗濯仲間です。
おばちゃんふうん。まあ、そういうことにしとくか。
ナレーション千夏さんは耳まで赤くなってた。
ナレーション俺も多分、同じ色だったと思う。
ナレーション仕事の話はお互いしなかったんだ。
ナレーションただ、彼女の手はいつも荒れてた。
ナレーション指先がガサガサで、絆創膏だらけで。
ナレーション真っ白なスニーカーをいつも念入りに洗ってた。
ナレーション何の仕事かは聞かなかった。
ナレーション夜勤明けの人間は、仕事の話をしたくないんだ。
ナレーションそれだけは俺にもよくわかったから。
ナレーション代わりに、どうでもいい話ばかりした。
ナレーション駅前のパン屋は、六時半に焼きたてが出ること。
ナレーションこの店の三番の乾燥機だけ少し強力なこと。
ナレーション柔軟剤は結局、どれも同じ匂いに思えること。
ナレーションどうでもいい話なのに、火曜が待ち遠しかった。
ナレーション夜勤のシフト表を見て、火曜を数える。
ナレーションいつの間にかそんな毎日になってたんだ。
テロップ:「台風の朝」
ナレーション季節が変わって、台風が来た朝だった。
ナレーションランドリーに着いたら、店の中が真っ暗なんだ。
ナレーション停電だよ。乾燥機が全部止まってた。
ナレーションそして千夏さんが、濡れた白い服を抱えて立ってた。
ナレーション今にも泣きそうな顔で。
千夏これ、明日の朝までに絶対に乾かさないとダメなんです。
俺隣町のランドリーなら、たぶん動いてます。
俺車で十五分です。乗ってください。
千夏……すみません。お願いします。
ナレーション彼女が深く頭を下げたのは初めてだった。
ナレーションよっぽど大事な服なんだなと思ったんだ。
テロップ:「土砂降りの車内」
ナレーションワイパーが効かないくらいの雨だった。
ナレーション彼女は白い服を、ずっと膝の上で抱えてた。
ナレーション信号待ちでふと視線を感じたんだ。
ナレーション彼女がハンドルを握る俺の左腕を見てた。
千夏健太さん。その傷、聞いてもいいですか。
俺ああ、これですか。三年前に倉庫でやっちゃって。
俺ベルトコンベアに腕を挟まれて、救急車で運ばれたんです。
ナレーション彼女は白い服をぎゅっと握りしめた。
千夏もしかして、市民病院に運ばれませんでしたか。
ナレーションなんで知ってるんだ、と思ったよ。
テロップ:「三年前の夜」
ナレーション三年前のことは、正直あんまり覚えてないんだ。
ナレーション血だらけで、痛くて、意識が飛びかけてた。
ナレーション処置室の天井の白さだけ、やけに覚えてる。
ナレーションこのまま朝が来ないんじゃないかって、怖かった。
ナレーションただひとつだけ覚えてることがある。
ナレーション処置室で震えてた俺の手を、誰かが握ったんだ。
ナレーション小さくて、少し冷たい手だった。
ナレーションそしてその誰かが言ったんだ。
ナレーション大丈夫です、朝は必ず来ますから、って。
ナレーション声も手も、震えてた気がする。
ナレーションでも、その言葉で息ができたんだ。
ナレーションその声だけ、三年間ずっと耳に残ってた。
ナレーション夜勤が辛い夜はいつも思い出してた言葉だ。
ナレーションそれを話したら、彼女の目から涙がこぼれたんだ。
千夏それ、私です。
千夏あの夜が、私の初めての夜勤だったんです。
千夏初めて受け持った患者さんが、健太さんでした。
ナレーション彼女は看護師だったんだ。
ナレーション荒れた手も、白い服も、白いスニーカーも。
ナレーション全部そういうことだったんだよ。
テロップ:「白い服の理由」
千夏あの夜、私、怖くて手が震えてたんです。
千夏だからあの言葉は、半分自分に言ってたんです。
俺それでも俺は、あの言葉に三年間助けられてました。
俺だから今も、夜の倉庫で働けてるんです。
ナレーション彼女はしばらく何も言わなかった。
ナレーション雨の音だけが車の中に響いてた。
ナレーション隣町のランドリーはちゃんと動いてた。
ナレーション白い服が乾くまでの四十分。
ナレーション俺たちは初めて、仕事の話をしたんだ。
ナレーション夜の倉庫のこと。夜の病院のこと。
ナレーション朝日がやたら眩しいこと。
ナレーション話はいくらでも出てきたんだよ。
テロップ:「来ない火曜日」
ナレーションところがだ。
ナレーションそれから少しして、彼女が来なくなったんだ。
ナレーション一週目はたまたまだと思った。
ナレーション二週目は風邪かなと思った。
ナレーション三週目でさすがに心配になった。
ナレーション連絡先も、住んでる場所も知らない。
ナレーション知ってるのは下の名前と職場だけだ。
ナレーション病院に押しかけるのは、違う気がした。
ナレーションだから俺は、毎週火曜に待つことにしたんだ。
ナレーション洗濯物がない週も、缶コーヒーを二本買って。
ナレーション一本は自分で飲んで、一本は持って帰った。
ナレーション冷蔵庫に、甘い缶コーヒーがたまっていく。
ナレーション自分でも馬鹿だなと思ったよ。
ナレーションそれでも、やめられなかったんだ。
ナレーション彼女の言葉を借りることにした。
ナレーション朝は必ず来る。だったら、彼女もきっと来る。
おばちゃんあの子、最近見ないね。喧嘩でもしたのかい。
俺してませんよ。……待ってるだけです。
おばちゃんそうかい。男はそれくらいがちょうどいいよ。
テロップ:「五週目の朝」
ナレーション五週目の火曜だった。
ナレーション自動ドアが開いて、彼女が立ってたんだ。
ナレーションひと回り痩せて見えた。
ナレーション目の下のクマがひどかった。
千夏……来ちゃいました。
俺おかえりなさい。コーヒー、甘いのでいいですか。
ナレーション彼女は頷いて、それから少しだけ泣いた。
ナレーションずっと担当してた患者さんを見送ったらしい。
ナレーションそれから仕事が怖くなったんだと。
ナレーション洗濯する気力もなくて、部屋にこもってたんだと。
ナレーション詳しいことは聞かなかった。
ナレーション代わりに、返すべき言葉を返したんだ。
俺千夏さん、大丈夫です。朝は必ず来ますから。
俺現にほら、今朝も来てます。
ナレーション彼女は泣きながら吹き出した。
千夏……ずるいです。それ、私の言葉なのに。
ナレーション乾燥機がゴトゴト鳴ってる、いつもの朝だった。
ナレーションでも俺はこの朝を、一生忘れないと思ったんだ。
テロップ:「火曜日以外も」
ナレーションその次の火曜、俺は決めてた。
ナレーション洗濯物を畳む彼女の横で言ったんだ。
俺千夏さん。火曜以外も、会ってもらえませんか。
千夏……夜勤明けの、ボロボロの顔でもいいなら。
俺俺だって毎週、ボロボロの顔を見せてます。
千夏ふふ、確かに。じゃあ、はい。喜んで。
ナレーション後ろで、おばちゃんの咳払いが聞こえた。
おばちゃんようやくかい。タオル三十枚、賭けてたんだよ。
ナレーション誰と賭けてたんだよ、とは聞けなかった。
テロップ:「朝のデート」
ナレーション初めてのデートは朝の五時半集合だった。
ナレーション夜勤明け同士だとそうなるんだよ。
ナレーションまず市場の食堂で朝定食を食った。
ナレーション焼き魚と味噌汁で、彼女は米を二杯食べた。
千夏引きました?
俺いや。頼もしいなと思って見てました。
千夏夜勤明けは、お米が一番おいしいんです。
ナレーションそれから河川敷をゆっくり歩いた。
ナレーション世間は通勤ラッシュの時間だ。
ナレーション橋の上を、急ぎ足の人が流れていく。
ナレーション俺たちだけが、逆向きにのんびり歩いてた。
ナレーションなんだか世界を二人占めしてる気分だったよ。
ナレーション八時には、お互い眠くなって解散した。
ナレーションたった二時間半のデートだ。
ナレーションでも帰り道、ずっとにやけてたんだ。
テロップ:「それから二年」
ナレーション付き合ってからも、二人とも夜勤のままだった。
ナレーションすれ違いもそりゃあ多かったよ。
ナレーションでも夜勤明けの朝メシはいつも二人で食った。
ナレーション朝六時の牛丼屋。朝七時のファミレス。
ナレーション世間の朝は俺たちにとっての夜だ。
ナレーションそれでよかった。それがよかったんだ。
ナレーション一度だけ、大きめの喧嘩もした。
ナレーション疲れがたまってた時期に、言い方を間違えたんだ。
ナレーション三日間、連絡を取らなかった。
ナレーションでも火曜の朝、二人とも同じ店にいた。
ナレーション洗濯のサイクルは嘘をつかないんだよ。
千夏……先に謝ったら、負けですか。
俺いや。先に謝ります。ごめん。
ナレーション仲直りの缶コーヒーは、二本とも甘いやつにした。
ナレーション彼女の実家にも挨拶に行った。
ナレーションお義父さんは、腕組みして黙ってる人だった。
ナレーションでも俺の左腕の傷の話になった時。
ナレーション娘が初めて夜勤で泣いて帰った日の話をしてくれた。
ナレーション患者さんの手を握ることしかできなかったって。
ナレーションあの夜、救われてたのは俺だけじゃなかったんだ。
ナレーションそして付き合って二年目の、ある火曜日。
ナレーション俺は例のコインランドリーに彼女を呼び出した。
テロップ:「百二十円のプロポーズ」
ナレーション朝六時。乾燥機の前。
ナレーション前の晩から心臓がうるさかった。
ナレーション夜勤中、何度もポケットを確かめた。
ナレーション指輪の箱はちゃんとそこにあった。
ナレーション店に着くと、彼女はもう来てた。
ナレーションいつもの席で、いつもの缶コーヒーを二本持って。
ナレーション俺は彼女の手に、百二十円を握らせたんだ。
千夏なんですか、これ。
俺最初の日の百二十円、返してもらったじゃないですか。
俺あれ、やっぱり貸しっぱなしにしたくて。
俺一生かけて、利子ごと返してもらえませんか。
ナレーションポケットから指輪の箱を出した。
ナレーション彼女は百二十円を握ったまま、泣き笑いになった。
千夏……はい。一生分の利子、覚悟してくださいね。
ナレーション乾燥機の音が、その日だけ拍手に聞こえたんだ。
テロップ:「その後の話」
ナレーション俺たちは今年の春、結婚した。
ナレーション式には、あのおばちゃんも呼んだんだ。
ナレーション新居には、ドラム式の洗濯乾燥機がある。
ナレーションでも火曜の朝は、たまに二人でランドリーに行く。
ナレーションあの百二十円は、小さな額に入れて飾ってある。
ナレーション玄関の一番目立つところにだ。
ナレーション来客はみんな、なんですかこれって聞く。
ナレーションそのたびに二人でこの話を最初からするんだ。
ナレーションご縁が百二十円。人生で一番安い買い物だったよ。
ナレーション夜勤で頑張ってる誰かに言っておきたいんだ。
ナレーション大丈夫、朝は必ず来るから。
ナレーションあと、ランドリーの小銭は多めに持っとけよ。
テロップ:「後日談」
千夏ちなみに披露宴のスピーチは、あのおばちゃんでした。
おばちゃんこの二人、くっつくまでが長いのなんの。タオル三十枚が乾くより遅かったよ。
注記
※全編フィクションです。実在の人物・団体・店舗・医療機関とは一切関係ありません。
※本作は自主制作のポートフォリオ用サンプル台本です。
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