YOUTUBE SCRIPT SAMPLE — スカッと系/一人称語り・合いの手
封を切られなかった内容証明
〜式2ヶ月前に略奪され、解約を書面で知らせても誰も確かめなかった〜
自主制作サンプルです。クライアント案件ではありません。全編フィクションで、実在の人物・団体・施設とは関係ありません。本ページはフル尺の全文を掲載しています。
この台本で見ていただきたいところ
- 「読まない三人組」が届いた書面を確かめずに自滅する、騙し討ちゼロの落とし設計
- 敵の迷言「掴んだもん勝ち」が本人に返って回収される伏線
- 試着室のウエスト自慢が、終盤で妊娠の嘘を崩す墓穴になる仕込み
- 式当日のロビーで3段階のスカッとを畳みかける、実測した型どおりの構成
テロップ:「試着室に知らない花嫁」
テロップ:「式2ヶ月前」
ナレーションねえ、聞いて。私、結婚式の2ヶ月前に、自分のウェディングドレスを着た知らない女と対面したの。
ナレーション場所は式場の試着室。最終フィッティングの予約で行ったら、カーテンの向こうから出てきたのは私じゃない誰かだった。
合いの手は?
ナレーションその女、鏡の前でくるっと一回転してから、私を見つけてにっこり笑ってこう言ったの。「あ、どちら様ですかぁ?ここ、私の試着室なんですけど〜。……もしかして前の人?翔太さんの本当の婚約者は、私でぇす♡」
合いの手待て待て待て。
ナレーションちなみにそのドレス、私が半年かけて選んで、私の体に合わせて仮直しまで入ってたやつね。
ナレーションドッキリだったらどんなによかったか。残念だけど、これは実際にあった話。ちょっと長くなるけど、順を追って説明するね。
テロップ:「私と翔太のこと」
ナレーションまず自己紹介。私は彩香、32歳。医療機器メーカーで営業事務をやってる。
ナレーション婚約者だった男は翔太、33歳。広告代理店の企画職。大学の同じゼミで、社会人になってから同窓会で再会して付き合った。
ナレーションプロポーズは去年の冬。「彩香の淹れる味噌汁を毎朝飲みたい」って、ベタなことを真顔で言う人だった。
ナレーション式は10月の大安に、ロゼリア迎賓館っていう庭の綺麗な式場を予約してた。担当プランナーの真尋は、偶然だけど私の大学時代の友達でね。
ナレーションロゼリアを選んだのは、真尋がいたからだけじゃないの。あそこの庭のもみじが、ちょうど10月に色づくから。紅葉の庭で写真を撮るのが、小さい頃からの夢だった。
合いの手その夢ごと乗っ取られかけたのか……。
ナレーション見積もりも打ち合わせも順調。ドレスも決まって、招待状の宛名書きまで終わってた。そこまでは本当に幸せだったの。
テロップ:「去年の冬からの兆候」
テロップ:「去年の冬から」
ナレーション思い返せば、兆候は去年の冬からあった。翔太の残業が急に増えて、スマホは常に画面を伏せて置くようになった。
ナレーションクリスマスは直前に「接待が入った」でドタキャン。年が明けたら、私の誕生日を素で忘れてた。
ナレーション極めつけは、クリーニングに出そうとしたスーツから出てきたレシート。イブの夜、私の知らない予約名で、レストランのペアディナー。
ナレーション問い詰めたら「後輩の相談に乗ってただけだ。疑うなんて心が狭いんじゃないか」って逆ギレされた。
合いの手逆ギレは自白と同じなのよ。
ナレーション式の打ち合わせは「仕事で行けない、任せる」が5回連続。ドレスの色も、料理のコースも、翔太は何ひとつ知らないまま話が進んでた。
ナレーションあの頃の私は、違和感を全部「式の準備で疲れてるせい」の箱に放り込んでた。人間、幸せの予定があると、目の前の火事から目をそらすのね。
ナレーションただね、これだけは不幸中の幸いだった。式の準備を全部丸投げされてたから、決めたことはその都度メールで翔太に送って、確認を取ってたの。返事は毎回「了解」の二文字だけ。
ナレーションあとで数えたら、その「了解」が41通あった。つまり式の決定事項は全部、あの人が自分で承認した、日付つきの記録になってたの。
合いの手その二文字が後で効いてくるやつだ。
ナレーションそういうこと。あともうひとつ、今年の春にあった両家の顔合わせも、今思えば伏線だらけだった。
ナレーション翔太の母の郁代さんは、乾杯の前にこう言ったの。「うちはこの土地で四代続いた家なのよ。式は家の格に合わせてもらわないと」
ナレーションうちの両親が共働きだと知ると「あら、それじゃ娘さんは家庭に入る練習からねぇ」って。
合いの手初対面でこれは強い。
ナレーションこの人の「家の格」へのこだわりも、最後にちゃんと本人へ返っていくから、覚えておいて。
テロップ:「瑠奈という女」
テロップ:「試着室の女」
ナレーション話を試着室に戻すね。「本当の婚約者」を名乗ったその女は瑠奈、25歳。翔太の会社の2年目の後輩だった。
ナレーション私が「そのドレスを脱いでもらえますか」って言ったら、返事がこれ。「えー、やだ。だってこれ、もう私のになるやつだし〜」
ナレーション「あ、そうだ。サイズ直しお願いしまーす。私ウエスト58なんで。今のままだとブッカブカで♡」
合いの手初対面の人間に言う台詞じゃないのよ。
ナレーションしかもよく見たら、私の予約札の横にあったティアラの箱まで勝手に開けてた。「これ地味〜。もっと盛れるのないんですかぁ?」って、備品を頭に乗せながら。
ナレーション呆然としてる私に、瑠奈は畳みかけてきた。「ってか、翔太さんから聞いてないんですかぁ?私たち、もう半年以上のお付き合いなんですけど〜」
ナレーション「式場もドレスも招待状も、ぜーんぶ決まってるって聞いたから、私は当日入るだけでいいやって♡ 準備してくれて、ありがとうございまーす」
ナレーションさらにこの女、鏡に向かってポーズを取りながら続けたの。「私、掴んだもん勝ちだと思ってるんで。人のものでも、最後に掴んでた人が持ち主なんですよ〜」
合いの手出た、名言のつもりの迷言。
ナレーション覚えておいて。この「掴んだもん勝ち」が、この話の全部の鍵になるから。
ナレーションそこへ、担当プランナーの真尋が血相を変えて飛び込んできた。「瑠奈様のご予約は本日入っておりません。ご退出をお願いします」
ナレーション瑠奈は受付で「翔太さんの連れなんで〜」って言って、勝手に試着室まで上がり込んでたの。
ナレーション追い出される時も悪びれもせず、「えー、固いなぁ。どうせ全部私のになるのに」って笑ってた。
テロップ:「婚約者の言い分」
テロップ:「その日の夜」
ナレーション夜、翔太を呼び出して試着室のことを聞いた。言い逃れするかと思ったら、返ってきたのは開き直りだった。
ナレーション「瑠奈は俺を必要としてくれる。お前は仕事と段取りの話ばっかりで、もう女じゃなくて幹事なんだよ」
合いの手幹事にさせたのはどこのどいつだよ。
ナレーション極めつけはこれ。「式はそのままやる。相手が瑠奈に変わるだけだ。会場も日取りも動かすな。親戚にはもう話してある」
合いの手待て待て待て。何をどう話してあるんだよ。
ナレーションさらに翔太は胸を張ってこう言った。「瑠奈のお腹には俺の子がいるかもしれないんだ。お前と違って、あいつは俺に家族をくれる」
ナレーションかもしれない、で式を挿げ替える男。私はその場で婚約指輪を外して、テーブルに置いた。
ナレーション不思議なくらい涙は出なかった。代わりに、頭の中がすーっと事務モードに切り替わったの。
ナレーション翌日から私がやったことは3つ。1、式場の契約内容の確認。2、両家の親への報告。3、翔太とのやり取りを全部書面に残すこと。
ナレーション感情で殴り返すのは簡単だけど、それだと私が悪者にされて終わる。だから武器は紙とハンコに決めた。
テロップ:「義母からの電話」
ナレーション翔太の母の郁代さんからは、報告の翌日に電話が来た。てっきり謝罪かと思うでしょ。違うの。
ナレーション開口一番「あなた、身を引いてくださる?瑠奈さんは若いし、赤ちゃんもいるかもしれないの。うちは初孫が最優先なのよ」
ナレーション「式はそのまま使わせてもらうわね。大安で押さえてあるんでしょう?招待状の刷り直しくらいは、そちらでやってくださらない?」
ナレーションついでに言われたのがこれ。「あなた個人は段取り上手で助かってたのよ。次の方のために、引き継ぎのメモとか作ってくださらない?」
合いの手退職する社員への扱いなのよ。
ナレーション息子の裏切りを詫びる言葉は、最後まで一言もなかった。あるのは初孫と、四代続いた家の式の話だけ。
ナレーション私は一言だけ返した。「式場のことは、契約に沿って進めますね」
ナレーション嘘は言ってない。この言葉の本当の意味を、あの親子は当日まで確かめようとしなかった。それだけの話。
テロップ:「話し合いという名の何か」
テロップ:「三者面談」
ナレーション数日後、翔太が「ちゃんと話し合いたい」って言うから応じたら、カフェに瑠奈を連れてきた。
合いの手連れてくるな。
ナレーション席に着くなり瑠奈は私のメニューを覗き込んで「あ、私パフェで〜。奢りですよね?手切れ金代わりってことで♡」
ナレーション翔太が用意してきた話は、要するに「慰謝料はなし、式は引き継ぎ、円満に別れたことにしてほしい」。自分に都合のいい単語だけで組み立てた作文だった。
ナレーション私は持参した合意書の案をテーブルに置いた。婚約不履行の慰謝料、式場解約料の負担、今後の接触禁止。日付と金額を全部入れて。
ナレーション瑠奈がそれを横から覗いて笑ったの。「うわ、細か〜い。そういうとこですよ?愛は書類じゃないんで」
ナレーションちなみにこの日の瑠奈はパフェを2つ頼んで、伝票を当然のように私の前へ滑らせてきた。私は自分の紅茶の分だけ置いて席を立った。
ナレーション翔太は「サインはする。その代わり式のことには口出しするな」って。口出しも何も、私はもう解約を決めてたから、望むところだった。
ナレーション帰り際、瑠奈が言った捨て台詞がこれ。「10月の大安、見に来てもいいですよ?私の晴れ姿♡」
ナレーションうん。晴れ姿はちゃんと見届けたよ。ロビーでだけど。
合いの手先に言うな先に。
テロップ:「同期の告白」
ナレーションその週末、翔太の同期の大和くんから連絡が来た。何度か食事も一緒にした、義理堅い人。
ナレーション「彩香さん、言いにくいんですけど。瑠奈さん、社内で言い回ってるんです。『先輩の結婚式、主役が私に変わるかも♡』って。半年以上前からずっと」
ナレーション「それと、これは噂なんですけど。瑠奈さん、浜田部長とも……いや、すみません。確証がないんで、やめておきます」
合いの手ん?今、ものすごく大事なことを言いかけたな?
ナレーションこの時の大和くんの言いよどみの意味は、当日ぜんぶ分かることになる。頭の隅に置いといて。
テロップ:「契約者は誰か」
合いの手待って。式場に「あいつら追い出してください」って先に頼んだんじゃないの?
ナレーションそれはしてない。式場を私の私怨で動かしたら、その時点でこっちが加害者になるから。私がしたのは契約の話だけ。
ナレーションここで大事な事実をひとつ。ロゼリア迎賓館の契約者は私。申込書の署名も前払い金の振込も、全部私の名義だった。
ナレーション翔太は打ち合わせに来ないから、書類関係は自然と全部私になってたの。あの男、自分の式の契約者が誰かも知らなかったと思う。
ナレーション真尋に事情を話して、規約を一緒に確認した。結論はシンプルだった。契約の名義変更も、新郎新婦の入れ替えもできない。
ナレーション翔太たちがあの会場で式を挙げたいなら、私が解約した上で、自分たちで新規に申し込み直すしかない。
合いの手でもさ、解約したら自分の式も消えるじゃん。そこは迷わなかったの?
ナレーション迷ったよ。半年かけて決めた庭も料理も、全部消えるんだから。でも他人の式の下請けをするために選んだ会場じゃないもの。
ナレーション私は8月10日に正式な解約手続きをした。所定の解約料はかかったけど、婚約不履行の示談の中で、翔太側が負担する条件を書面で合意した。
ナレーション手続きの日、真尋は最後に前撮りの写真データを差し出して「これはあなたのものだから」って。まだ何も知らなかった頃の私が、紅葉の庭の下見で笑ってた。
ナレーション手続きの最後に真尋が言った。「契約内容は個人情報だから、契約者以外の人に聞かれても、うちからは詳細を答えられないの」
合いの手ん?それってつまり……。
ナレーションそう。翔太たちが自分の足で式場に来て、正面から手続きしない限り、あの枠がどうなってるかは誰も教えてくれないってこと。
ナレーションもちろん式場は親切だから、翔太に「挙式には新規のご契約が必要です」って案内は入れてた。それを潰したのが、他でもない瑠奈なんだけどね。
テロップ:「花嫁アカウント」
ナレーション解約から2週間後。友達から「これ見て」ってスクショが送られてきた。瑠奈のSNSに、花嫁準備アカウントができてたの。
ナレーション載ってた写真は、試食会のコース料理、装花の見本、会場の下見の風景。ぜんぶ私が自分のアカウントに載せてた写真の転載だった。
ナレーション添えられた文章がまたすごい。「彼が全部決めてくれた式♡ 私は当日ドレスを着るだけ〜。愛されてる証拠かな?」
合いの手全部決めたのは前の婚約者なんですけどね。
ナレーション私の友達やフォロワーが次々に気づいて、「その写真、彩香さんのですよね?」ってコメントが並び始めた。
ナレーション瑠奈は反論ひとつせずに投稿を全消しして、アカウントごと消えた。謝罪は最後までなし。
ナレーションこの騒ぎは翔太の会社にも伝わってた。大和くんいわく、部署の女性陣は全員瑠奈の正体を察して、ランチに誘わなくなったって。
ナレーション本人は「嫉妬こわ〜い」って言ってたらしい。どこまでも自分に都合よく翻訳する女なの。
ナレーションしかも消える直前、捨てアカウントで私に一言だけ送ってきた。「監視こわいんですけど〜」。盗んだ側が監視を名乗るの、新しいよね。
合いの手思考回路が新種すぎる。
ナレーションこれが最初の、小さいスカッと。でもね、本番はここからだから。
テロップ:「非常識な電話」
ナレーションアカウント消滅の数日後、知らない番号から電話が来た。出たら瑠奈だった。
ナレーション「式場の会員ページ、ログインできないんですけど〜。パスワード教えてもらえます?あと最終打ち合わせって何日ですかぁ?」
ナレーション私は「契約のことは、ご自分たちで式場に確認してください」とだけ言った。そしたらあの女、鼻で笑ってこう言ったの。
ナレーション「ケチくさ。ま、いっか。式場もドレスも押さえてあるって郁代さんが言ってたし〜。私、めんどくさい手続きはやらない主義なんで」
ナレーション「当日ドレス着て立ってれば、式なんて始まるでしょ。掴んだもん勝ちなんで♡」
ナレーション私は止めなかった。契約者じゃない人に説明する義務は、私にも式場にもない。真尋の言う通りだった。
ナレーション後で分かったけど、式場から翔太に入った「新規契約のご案内」の電話も、瑠奈が「それ営業電話ですよ〜」って横から握り潰してたの。
合いの手自分で自分の式を握り潰してて草。
テロップ:「紙の武器」
テロップ:「弁護士相談」
ナレーション8月の終わり、私は市の法律相談を入り口に、弁護士の先生へ一度だけ相談に行った。持って行ったのは、例の記録フォルダ。
ナレーション式の決定事項のメールと「了解」の返事、試着室の日の式場の報告書、瑠奈のSNSのスクショ、翔太の開き直り発言の日付入りメモ。
ナレーション先生は一通り眺めて、ぽつりと言った。「ここまで記録が揃っている方は珍しいです。これなら、そもそも争点が立ちません」
合いの手敵が弱いんじゃなくて、こっちが強すぎる。
ナレーション先生の勧めで、もうひとつやったことがある。式の契約は解約済みであること、あの会場で式を挙げるなら新規の契約が必要なこと。この2つを、内容証明郵便で翔太と郁代さんに送ったの。
ナレーション騙し討ちって言われるのだけは癪だからね。こっちは全部、日付と配達記録つきで知らせておく。読むかどうかは向こうの問題。
合いの手ここまでやって読まれなかったら、もう芸術だよ。
ナレーション実際、合意書は一度も揉めずに成立した。翔太は「早く終わらせたい」の一心でサインして、中身をろくに読んでなかったと思う。
ナレーション読まない癖って、直らないのね。契約も、案内も、内容証明も、人の心も。
テロップ:「乗り込んできた義母」
ナレーション9月の頭には、郁代さんがうちの実家に乗り込んできた。手には私が送った内容証明。開封はされてた。つまり、読んだ上で来たの。
ナレーション「こんな脅し文句を送りつけて、息子の式を人質に取るなんて、なんて意地の悪い娘さんなの」って、玄関先で騒いだわ。
ナレーション対応したのはうちの父。無言で書類のファイルを差し出して、静かに言った。「脅しではなく事実です。式の契約者は娘で、解約は8月10日に済んでいます。必要な精算は書面の通り。以上です」
ナレーション郁代さんは「本気で解約したっていうの!?」って、そこで初めて素っ頓狂な声を上げた。
合いの手読んだのに信じてなかったのかよ。
ナレーション整理するね。翔太は届いた内容証明を「どうせ嫌がらせだ」って開封もしなかった。郁代さんは読んだ上で「ハッタリに決まってる」って決めつけた。瑠奈は「めんどくさい手続きはやらない主義」。
ナレーションつまり三人とも、式場に電話一本かければ10秒で確かめられることを、誰ひとり確かめなかったの。
合いの手役満じゃん。
ナレーション父に追い返された郁代さんは、その足で瑠奈の実家へ挨拶に行ったらしい。そこで瑠奈のお母さんにこう言われたんだって。
ナレーション「またですか。あの子、3年前も婚約者のいる方とそういうことになって、結局向こうのご家族に追い返されてるんです。今回も、どうせ……」
合いの手前科持ちだった。
ナレーション実の母親が一番の証人ってすごいよね。それでも郁代さんは引き返さなかった。「今回はお腹に初孫がいるかもしれませんから」って。
合いの手かもしれない、で突き進む一族だ。
ナレーションちなみに解約の件だけは、さすがに慌てて瑠奈に電話で確かめたらしいの。返ってきた答えがこれ。「あ〜、大丈夫でぇす。私が新しく契約し直しといたんで♡」
ナレーションもちろん真っ赤な嘘。でも郁代さんは今回も、式場に電話一本入れずにそれを信じた。配達記録つきの書面より、あの女の口約束を信じたの。
ナレーションかもしれない、に全部を賭けた姑。この判断が、当日の地獄を確定させることになる。
テロップ:「届いた招待状」
ナレーション式の3週間前。私と翔太の共通の友人のところに、翔太と瑠奈の連名の招待状が届いた。会場はロゼリア迎賓館。日付は、私が解約したあの10月の大安。
ナレーション内容証明を送って、父が面と向かって伝えて、それでもこれ。招待状はネット印刷の自作だった。式場の正式な発注じゃないから、発送の前に会場の予約を確かめる仕組みも働かない。
合いの手手作りの暴走機関車すぎる。
ナレーション後から聞いた話だと、引き出物も瑠奈が「当日にまとめて払えばよくないですか〜?」って業者に言って断られて、結局何ひとつ手配されてなかったらしい。
ナレーション友人グループのチャットは軽くパニックになってた。「彩香と式をやるはずじゃ……」「相手が違う」「会場が同じって何?」
ナレーション友人は気を利かせて「会場、変わってないの?大丈夫?」って翔太に聞いてくれたらしい。返事は「母さんたちが押さえてるから大丈夫」。
合いの手全員が誰かに丸投げしてる。
ナレーション私は友人たちに一言だけ送った。「事情は察しの通り。ご祝儀は包まないであげて。あと当日、多分式はないから」
合いの手預言者で草。
ナレーションそしてその招待状は、翔太の上司の浜田部長の自宅にも届いてた。瑠奈が「お世話になってる部長は絶対呼ぶの♡」って聞かなかったから。
ナレーション返信はがきには、こう書いてあったそうよ。「夫婦二名で出席させていただきます」
合いの手ん?夫婦で?
ナレーション大和くんの言いよどみを覚えてる人は、もう嫌な汗が出てるよね。この「夫婦で」の意味は、当日ちゃんと回収されるから待ってて。
テロップ:「当日、会場に予約はなかった」
テロップ:「10月の大安、当日」
ナレーション式当日の朝9時。私のスマホに、ロゼリア迎賓館から電話が来た。
ナレーション「解約済みのお日にちに、ご親族を名乗る団体様が続々とお見えです。契約者様に、事実確認のご協力をお願いできますか」
合いの手始まった。
ナレーション正直、行くかどうかは迷った。でも真尋に「契約者として事実を言うだけでいい。あとは全部こっちでやる」って言われて、腹を決めた。
ナレーション復讐しに行くんじゃない。事実確認に行くの。それなら私は一言で足りる。
ナレーション真尋の付き添いでロビーへ入ると、そこにいたのは礼服姿の親族と会社関係者、およそ80人。遠方から新幹線で来たおじいちゃんまでいた。
ナレーションみんな手に招待状を持って、受付の看板を探してうろうろしてた。でも案内板にあるのは、他のご家族の結婚式の名前だけ。
ナレーション受付のテーブルもないから、ご祝儀袋を持ったまま行き場を失ってる人もいた。私の連絡が届いてた友人たちは、そもそも一人も来てなかったけどね。
合いの手ご祝儀の行き場がないの、地獄絵図だ。
ナレーション受付の前では、白いドレス姿の瑠奈が支配人に食ってかかってた。どこかで借りた、サイズの合ってないドレスだった。
ナレーション「だから!翔太さんの名前で予約入ってるでしょ!?ちゃんと調べてよ!」
ナレーション支配人は静かに繰り返す。「本日、当会場に翔太様のご契約はございません」
ナレーション「じゃあ前の予約があるじゃん!それ使うから!」
ナレーション「該当のご契約は、契約者様のお申し出により、8月10日付で解約されています」
ナレーション「契約者って誰よ!」
ナレーション支配人が、私のほうへ静かに目を向けた。つられて、80人がいっせいに振り返った。
合いの手ここで主人公登場は熱すぎる。
ナレーション私は一言だけ言った。「契約者は私です。8月に解約しました。理由は、皆さんがご存じの通りです」
ナレーションロビーが静まり返った。それから、親族席のほうから「解約……?」「じゃあ今日の式は……?」ってざわめきが広がっていった。
ナレーション翔太が真っ白な顔で支配人に詰め寄った。「金なら払う!今からでいい、今日やらせてくれ!」
ナレーション「本日は他のお客様のご予約がございます。お引き取りください」
合いの手正論のガードが固い。
ナレーション翔太は次に私へ矛先を向けてきた。「お前、なんで黙ってたんだ!騙し討ちじゃないか!」
ナレーション私は鞄から控えの封筒を出して、一言だけ返した。「8月に、内容証明でお知らせしています。配達の記録もあります。読まなかったのは、そちらです」
合いの手読まない癖のツケが、最終回にまとめて来た。
ナレーション翔太は封筒を見た瞬間に黙った。開封もせずに放置した自分の分を、思い出したんでしょうね。
ナレーション瑠奈はまだ食い下がってた。「じゃあチャペルだけでも使わせてよ!写真だけでも!」
ナレーション「本日のチャペルは、この後お客様の挙式がございます」
ナレーションちょうどその時、今日の本物の新郎新婦がロビーの奥を通った。拍手が起きて、スタッフが一斉にそちらへ頭を下げた。
ナレーション式場は、契約した人のためだけに動く。当たり前の光景が、あの日いちばん残酷だった。
合いの手演出みたいな現実。
ナレーションここで郁代さんが瑠奈の腕を掴んだ。「あなた、新しく契約し直したって言ったじゃないの!!」
ナレーション「そんなの、その場しのぎに決まってるじゃないですかぁ!私、めんどくさい手続きはやらない主義って最初から言ってますけど!?」
合いの手開き直りの角度がすごい。
ナレーション見かねた翔太の伯父さんが進み出て、低い声で言った。「四代続いた家が聞いて呆れる。書面まで届いていたのに、段取りのひとつも確かめずに80人を呼んだのか」
ナレーション郁代さんは「私は聞いた話を信じただけで」って震えてた。信じるだけで、確かめない。この親子は最後までそれで沈んだの。
ナレーション身内の崩壊が始まったところで、私は試着室でのあの台詞をふと思い出した。だから一つだけ、静かに聞いたの。
ナレーション「瑠奈さん。試着室で私のドレスを着た時、『サイズ直しお願いします。私ウエスト58なんで』って言いましたよね。10月の式なのに、お腹は大きくならない予定だったんですか」
合いの手あのウエスト自慢が墓穴になった。
ナレーションロビーがしんとした。妊娠してるなら、式の頃に細く詰めたドレスが入るわけないの。あの女は自分の嘘の計算すらしてなかった。
ナレーション郁代さんの顔色が変わった。「……瑠奈さん。母子手帳を見せなさい。今、ここで」
ナレーション「は、はぁ!?そんなの持ち歩かないし!」「病院はどこ」「……」「まさか、あなた」
ナレーション瑠奈は目を泳がせて、最後にはロビー中に響く声で叫んだ。「妊娠くらい、これからすればいいじゃん!!」
合いの手くらい、とは。
ナレーション初孫のためにすべてを許してきた郁代さんが、絨毯の上にへたり込んだ。四代続いた家の式は、始まる前に崩れ落ちた。
ナレーション親族たちは一人また一人と、招待状を鞄にしまって出口へ向かい始めた。新幹線で来たおじいちゃんは「祝儀袋を持って帰るのは初めてだ」って苦笑いしてた。
合いの手おじいちゃんの一言が一番重い。
テロップ:「夫婦二名で出席」
ナレーションそして、とどめが来た。ロビーの入り口から、落ち着いた声がしたの。「あら、翔太さんと瑠奈さんのお式は、こちらでよろしいのかしら」
ナレーション浜田部長と、その隣に品のいい女性。例の返信はがきの「夫婦二名で出席」の、奥様のほうだった。
ナレーション奥様は瑠奈の顔をまっすぐ見て、にっこり笑った。「やっぱり。主人のスマホで何度も拝見したお顔だわ。旅行のお写真、素敵でしたね。先月の金沢も」
合いの手待って、情報量。
ナレーションそう。瑠奈は翔太と付き合いながら、妻子持ちの浜田部長とも続いてた。大和くんが言いよどんだ噂は、本物だったの。
ナレーション奥様は招待状が届いた日から証拠を整理して、関係者全員が集まる今日を、お披露目の場に選んで乗り込んできた。
ナレーション「皆さまお揃いのところ失礼します。近々、こちらの瑠奈さんに慰謝料を請求いたしますので、ご報告まで」
ナレーション瑠奈は翔太の袖にすがりついた。「違うの、これは、部長に掴まれただけで……」
ナレーション翔太はその手を振り払って言った。「掴んだもん勝ちなんだろ。お前が自分で言ったんだ」
合いの手伏線が本人にぶっ刺さって回収された。
ナレーション翔太は翔太で、浜田部長に頭を下げかけて、下げる意味がないことに気づいて固まってた。略奪した相手が、上司からの略奪品でもあったんだから。
合いの手因果が円になってる。
ナレーションサイズの合わない白いドレスのまま立ち尽くす瑠奈と、80人分の冷たい視線。10月の大安、ロゼリア迎賓館のロビーで、式は始まりもせずに終わった。
合いの手自業自得のフルコース、完食である。
テロップ:「年明けに聞いた話」
テロップ:「その後のこと」
ナレーションここからは後日談。年が明けた頃に真尋と食べたご飯の席と、大和くんからの報告で知った話を、まとめて話すね。
ナレーションまず翔太。婚約不履行の示談は、例の記録フォルダを先生が机に置いた時点で終わってた。争点がひとつもないの。慰謝料200万円も、式場の解約料42万円も、招待客80人への詫び状と手土産の費用も、全部合意書に書いた通り翔太側の負担で確定した。
ナレーション会社では企画部から資材管理へ異動。今は毎日、納品書と現物を一枚ずつ突き合わせる検品の仕事をしてるって。
合いの手書類を読まなかった男が、書類を照合する係になってる。
ナレーション瑠奈。浜田部長の奥様との示談は弁護士を通じて成立して、会社には居られなくなって退職した。地元に帰って、お母さんに「今度こそ地に足をつけなさい」って、知り合いの会社の事務に押し込まれたらしい。朝から晩まで、契約書のファイリングをしてるって。
合いの手めんどくさい手続きはやらない主義の、完璧な末路。
ナレーション浜田部長は役職を外れて子会社へ出向。奥様とは、お子さんが成人するまで別居のまま婚姻を続ける条件で合意したそうよ。
ナレーション郁代さんは、「四代続いた家の式」と親戚中に言い回っていた手前、招待客80人への説明と謝罪の行脚にまる2ヶ月かかったって。お詫び状は全部手書きで、宛名を一軒ずつ確かめながら書いたそうよ。確かめる練習としては、ちょうどよかったのかもね。
合いの手全員、書類に囲まれる罰を受けてて草。
ナレーション私への慰謝料200万円は、期日どおりに全額振り込まれた。私がしたのは、合意書の写しを添えて確認のメールを1通送っただけ。書類が厚いほど話が早く終わるのは、本当だった。
ナレーション翔太からは後日「やり直せないか」ってメッセージが1通だけ来た。私は返事の代わりに、接触禁止条項の写しを送った。それきり何も来てない。
ナレーション大和くんいわく、あの日のことは社内で語り継がれてるらしい。「届いた書面はちゃんと読もう」って、研修の小話にまでなったって。
ナレーションうちの父は、全部が終わった夜にぽつりと言った。「お前が書類を揃えるたびに、親としては切なかった。でも今日ほど頼もしい日はなかったよ」
合いの手お父さん、もらい泣きした。
テロップ:「掴んだもん勝ちの正体」
ナレーションその真尋とのご飯の席で、私はこう言った。
ナレーション「掴んだもん勝ちって言うけどね。掴んだ手の中に契約書がなければ、握ってるのはただの空気なのよ」
合いの手今日いちばんスカッとした。
ナレーション人から奪った式には、最初から自分の椅子が一脚もなかった。それだけの話だったの。
ナレーションそれにね、私は何ひとつ隠してなかった。解約のことも、新しい契約が要ることも、ぜんぶ日付つきの書面で知らせてあった。読まなかったのは、最初から最後まで向こうなの。
合いの手騙し討ちどころか、親切設計だったのよ。
ナレーションあとね、これは自分への戒めでもあるんだけど。信じることと、確かめないことは別物なの。
ナレーション私は信じて確かめなかった8ヶ月で式を失いかけて、確かめ続けた2ヶ月で、自分の人生を取り戻した。
ナレーション今の私は元気にやってる。慰謝料には手をつけず、週末は父と山に登って、平日は仕事をして、たまに真尋と美味しいものを食べてる。
ナレーションドレスはまだ着てない。でも焦ってない。次に袖を通す日は、会場も、隣に立つ人も、全部自分で選んだものだけにするって決めてるから。
ナレーション式の翌月にはね、ロゼリアの庭を真尋と歩いてきたの。もみじはちゃんと色づいてた。誰に奪われるでもなく、自分の足で見に行った紅葉は、ちゃんと綺麗だった。
合いの手最後にその伏線を回収するのは、ずるいなぁ。
ナレーションこのチャンネルでは、女性の毎日にひそむ理不尽をスカッと解決するお話を配信しています。
ナレーションスカッとした人は、チャンネル登録で次の動画もお見逃しなく。コメント欄の感想もぜんぶ読んでいて、いつも励みになってます。
ナレーション今日のお話、あなたが彩香の立場だったら、式当日のロビーで何て言った?よかったらコメントで教えてね。
ナレーションそれから、皆さんの体験談も募集してます。結婚式にまつわる修羅場、あなたの周りにもあったら、こっそり教えてね。
ナレーションそれじゃあ最後は恒例のじゃんけん。いくよ〜、じゃーんけーん、ぽん!勝った人はコメント欄で自慢してね。それじゃ、また次の動画で。
注記
※この物語は全編フィクションです。実在の人物・団体・施設とは一切関係ありません。
※本台本はポートフォリオ用の自主制作サンプルです。
本ページは書式・構成・調査の進め方をご覧いただくための自主制作サンプルです。収録用の詳細指示(情報テロップ・図解)はスプレッドシート側に分離しています。ご依頼の際は、ジャンル・尺・文字数・書式・出典の確認範囲のご指定に合わせて執筆します。